18世紀のヴィオラ・ダ・ガンバ(その2)

 

ボストン美術館所蔵の様々なサイズのヴィオラ・ダ・ガンバ(By Pacamah - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=141993216)

 以前からヴィオラ・ダ・ガンバの入手を考えていましたが、それは6弦のバスでした。私は18世紀のイギリス音楽が好きであり、語学の問題と、私の性質―限られた領域に専念しなければ気が済まず、あまり色々と手を広げることが嫌い、めんどくさがり屋、不器用、置き場所等々―の要請から、やはりそれは18世紀のイギリスに関係し、扱いが容易である必要があります。6弦のバスは、7弦のバスよりもとっつき易いように思われ、ソロにもアンサンブルにも使えます。レパートリーは7弦の曲をちょっとした工夫で弾くことができるものもあるのですが、7弦の楽器は現れた後もずっと6弦の楽器が作られ続けたことから、それはひょっとするとヒストリカルなアプローチでもあるように思われます。フランスのヴィオル(ヴィオラ・ダ・ガンバの仏語名。英語だとヴァイオル)曲は18世紀にイギリスへ輸入されていたようですし、時代は少し遡りますが、サント=コロンブの息子ジャンは渡英してダラムで活動していましたから、イギリスにも十分関係しています。また、ドイツから渡英してバッハの末息子クリスティアンと組んで活躍したアーベル、さらに彼の弟子の作品も6弦で演奏できるものがあります。それらのことを考えると、バロックリュートにおける11コースのように、6弦のバス・ヴィオラ・ダ・ガンバは7弦よりも扱いやすく、汎用性もあり、ヴィオラ・ダ・ガンバという楽器の中ではベスト・チョイスのように思われます。

 しかし、実際にはそうでもない(少なくとも私にとっては)のでした。

 まず、楽器が大きいこと。小さめの楽器でもバスくらいの大きさの楽器を脚に挟み、弦を押さえるのはちょっとしんどいものがあります。ハードケースに収納すると結構嵩張り、パッと見ると小学生低学年くらいの存在感があります。私はすでに多く楽器を所有しているので、さすがにこれほどの大きさの楽器を保管するのは避けたいというか、邪魔です。

 次に、低音が響きすぎること。コンサートやセッションで接したときのバスの響きを思い返してみると結構デカく響きます。ソロはともかく、アンサンブルの伴奏や通奏低音では、このよく響く低音は難物です。注意して弾かないと他の声部を塗りつぶしてしまい邪魔になります。この低音をコントロールする自信は私にはなく、うまく処理できるほど通奏低音の能力もありません。それに我が家は木造アパートですから、いくら楽器の演奏が許可されているにしても、これは苦情になるでしょう。なにより、同居猫を驚かせたくありませんし...

 レパートリーは7弦に次いで豊富にありますが、その多くは簡単に弾けるものではなありません。よく知られたアーベルの無伴奏曲を見るまでもないでしょう。イングリッシュギターのように簡単に弾けて楽しいレパートリーがあるのとは対照的です。私は特定の曲を弾くことに興味はないので、簡単に楽しく弾ける曲があることは大変に重要です。その楽器を弾くということが楽しめれば、(曲として残っている)レパートリーが多かろうと少なかろうとどうでも良い。ですので、バス・ヴィオラ・ダ・ガンバのレパートリーが豊富であるというメリットは、私にとってあまり恩恵がないのですね。

 そういうことを踏まえて改めて考えた結果、バスではなくテノールのヴィオラ・ダ・ガンバを探すことにしました。楽器は小さく、場所もバスほど取らない、扱いに難しい強い低音もない。しかも、18世紀のイギリスにおいてヒンツが、アルト(!)やバスと共にテノールを製作し販売していたので、18世紀のイギリスとも関係があります。もっとも、モラヴィア兄弟団の典礼音楽に使われていたらしいこと以外は、いったいどのような音楽を弾いていたのかはよく分かっていません。セッションや簡単なチューンを弾くのが目的なので、あまり問題はないでしょう。

 ちなみに、ヒンツのアルトやテノールのヴィオラ・ダ・ガンバはPeter Holman著の『Life After Death: The Viola da Gamba in Britain from Purcell to Dolmetsch』によると、今日のハーフサイズや3/4サイズのチェロのように、子供・若い女の子向けに作られた可能性があるようです。私のようにバスがサイズ的に大き過ぎると感じる人にはピッタリですね。

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